いつも真ん中を探している 音楽家・宮内優里インタビュー 後編


前編からつづく

アンビエントのライブが
八街の人で埋まったら面白い

八街でのLIVE活動INTROが5回目を迎えましたが、感触はどうですか?

楽しいです。法宣寺やWhy nuts?など、会場にも恵まれて、どのイベントもリラックスした温かい雰囲気のイベントになっている気がします。

INTROは八街の友人と、八街の人に聴いてもらいたいと思って始めたんです。
1年目のときは、八街で新しいムーブメントを作りたい!くらいの気持ちで張り切っていたんですが、ちょっと張り切りすぎていた気も。
一番難しいと思ったのが、イベントの周知ですね。告知はこれまでSNSを中心にやって来たんですけど、八街のひとに見てもらいたいと思うとSNSっていうのがあんまり通用しないなと感じました。

INTROも今の所、市外からのお客さんが多いですね。INTROという名前にはINTRODUCE(導入とか紹介とか)、八街を他の人に紹介するっていう意味も含まれているので、もちろん来てくださるのはうれしいですし、大歓迎なんですけど、もっと地元の方が増えたらいいなあと思っています。八街の人で埋まっちゃうくらいになったら面白い。そこまで行くにはなかなか時間がかかりそうなんですけど、あせらず、じっくり続けていきたいと思っています。

八街市立図書館でのライブラリーカフェはいかがでしたか?
(18/3/14に開催されたイベント 詳細はコチラ

まだ実験的なイベントなのではっきりした手応えはまだないんですが、普段のイベントは自分を予め知っているお客さんが多いので、それとは全然違いますね。
実際に図書館でやってみて、色んなお客さんがいらしていて、年配の方から小さい子まで、(僕とお客さんとが)お互いに探り探りの雰囲気もありながらの演奏でしたが、結構みなさん自由な感じで楽しまれていたような。たくさん人が集まって下さったので、それは素直に嬉しかったですね。
8+でも取材に伺いましたが、合間に贅沢にも読書させていただきました。読書している人もいれば、演奏に夢中な人もいて。それぞれの過ごし方をしていつつも、ふとした瞬間にお客さんがひとつになるというか、不思議な空間だったと思います。

「読書のためのBGM演奏」と銘打っていますけど、僕がやりたいのは、それぞれが、みんな一緒にいるのに、それぞれに集中できる空間をつくること。その中で、環境音楽・アンビエントと呼ばれる音楽を、もっと日常的に感じてもらいたいと思っています。まだどういった演奏・音楽がベストなのか、探り探りですね。

八街でのイベントを重ねられて、東京でLIVEするときと違いは感じますか?

一番違うのは、東京や都市部だと、ちょっと品定め感というかお客さんが冷静に見ている気がしますね。逆にすごい興味を持ってくれているという言い方もできると思うんですけど。
この辺りでやるライブは、どちらかというと、リラックスして見てくれている印象があるので、こちらとしてはすごくやりやすいです。僕もリラックスして演奏しています。

八街ってちょうど真ん中なんじゃないかな
いちばんバランスがいい

八街で好きなスポットや良く行くところはありますか?

やっぱり、一番好きなのは近所の田んぼです(YACHIMATAシリーズの原風景となっている場所)。よく散歩していますね。スポット的なところでいうと、「平林のだんご」をよく食べますね。娘が大好きで。ライブをさせてもらった「Why nuts?」は面白い場所ですよ。同じく「法宣寺」も周りの環境も含め良いところです。榎戸のお蕎⻨屋さん「あさひ」はよく行きます。

たまに東京の人が遊びに来たりすると、何にもないみたいに驚かれたりするんですけど、八街って市内にはなかったりしても、実は海も都会の雰囲気も、ちょっと足を伸ばせば色々ありますね。30分ほど車で出ればどこも出やすくて割と何でも手に入る。今はネット通販もありますしね。
八街がいちばん良いなと思うのが、実は大自然と大都会のちょうど真ん中くらいなんじゃないかな、って感覚があって。都会に比べれば多少本数は少ないですが、電車もあるし、生活するために必要なお店は十分にある。自然もすぐ隣にあって。でも山奥みたいな大自然でもない。
それが現代の生活の真ん中くらいのような感じがして。
音楽も、僕はアナログもコンピューターもやるし、真ん中の音楽を作りたいと思っています。真ん中っていちばんバランスがいいような気がして。
そういう”真ん中の良さ”みたいなものを八街に住んで感じられるようになったんです。
新しいと古いの真ん中、美しいと汚いの真ん中、贅沢と節約の真ん中。いろいろな真ん中が、僕にはちょうどいい。

八街ってなんかリラックスできません?東京にいる時って、普通の場所にいても緊張感あって。八街だと飾り気なくいられる。

ミュージシャンとして地方で生活できるモデルができたら
夢があるんじゃないかなって

これからの展望は?

あんまりちゃんと考えてないですね。ただ、いまの僕の収入とか音楽のやり方として、仕事が依頼ありきでしかやれていないというか。
作曲の仕事とかも声を掛けてもらわなきゃ発生しない。そういうところからちょっと離れた活動もしていきたい。自分でどうにかできる力があったほうがいいかな、というのは思っていて。

いまのところ東京からの仕事が主ではあるんですけど、もしできることなら住んでるエリアで自分で仕事を生めるようにもなりたいかな。ミュージシャンとして自分のペースで自立した生活ができる、というのが理想ですね。

今みんなミュージシャンが東京とか都市部に集中してる中で、ライブのお客さんも取り合っているし、おそらく作曲の仕事も早い者勝ちみたいになっている気がします。
あと、地方から大きな予算を出して東京に仕事を頼む、みたいな感じとかもちょっと寂しいなというか勿体ないなと思っていて。ほんとは地元それぞれに頼む側と頼まれる側がいたらいいなと思うんです。

僕も今こうやって八街でやっていくなかで、どういう形があるのかまだわからないんですけど。

お話を伺っていると、常に客観的に色々考えてトライされているような印象があるんですが、宮内さんって実験タイプですか?

そうですね。見通しを立てるのが苦手で。。見通しは立てたがるんですけど。
例えば部屋の模様替えとか、DIYで何か作ってみたりすると全然うまくいかない。いざやってみると全然思ってたのと違う、というのはよくあります。でもそこから出る「まぐれ」みたいなものが好きで。

曲作りもそうで。僕の場合は最初に思ったことから逸れていったほうが良いものができます。あくまでも自然に逸れた時なんですけど。思った通りにずっとやっていっても大したレベルに達しない感覚があって。だから思いついた順にやっていって、うまくいかなかったらこっそりやめたりしながら。

そういう意味では大きなお金をかけずに自宅で完結している環境は僕にとっては充実しています。特に不満がないです。

八街じゃなくても、こういうフリーランスの仕事はみんな都会から離れると楽になるんじゃないかなというのは思います。気楽にできるので。日本全国その土地その土地で色んな動きが出て来ると、もっと東京とか野心とか関係ないところで音楽や音楽以外にも色々なことができるんじゃないかな、と。

文化の地産地消のような?

そうですね。それこそ今は、⺠謡とか?その土地特有の文化みたいなものがこれから生まれていくのは少し難しくなったような気がします。あってもちょっと強引なものが多い気がして。もちろん、サクッと生まれるものではないとは思いますけど。

いまはテレビやインターネットで繋がっちゃったから情報が都市部を中心にすぐに紐づけられちゃったりして。昔は地方それぞれがもっとこっそりと好き勝手にやっていたのではと想像しています。

東京にいるよりも八街にいる方が余計な情報も入って来ないので、世の中の動向や顔色を気にせずに好き勝手できるなーというのはすごく感じていて。それは結構僕にとって大きいです。

僕も町おこしとかまで考えているわけじゃないですけど、そんなに稼がなくても、そんなに使わなければ、日本全国どこに住んでいたってミュージシャンとして、フリーランスとして生きていけるよ、みたいなモデルがどんどんできると、ちょっと夢があるな、と思うんですよね。



お話を伺ってみて、宮内さんをひと言で表すとしたら「自然体」。音楽への姿勢、未来への展望など、ナチュラルに真っ直ぐ向き合っているのが印象的だった。
八街での暮らしも、一見すると仕事上不都合が多そうなイメージをこちらが勝手に持っていたが、不便を逆にシンプルに捉えて楽しんでいる様子。宮内さんが考える「文化の地産地消」がどのような展開を見せるのか、これからも目が離せない。


宮内優里さんの最新情報は公式HPから
http://www.miyauchiyuri.com/
YACHIMATA他の楽曲はサウンドクラウドから聴ける
https://soundcloud.com/miyauchiyuri


宮内 優里 | MIYAUCHI YURI
作曲家/音楽家。1983年生まれ。千葉県八街市在住。これまでに6枚のアルバムをRallye Labelよりリリース。生楽器の演奏とプログラミングを織り交ぜた、有機的な電子音楽の制作を得意とする。アルバムではこれまでに、高橋幸宏、原田知世、小山田圭吾、星野源、It’s a Musical、GUTHERなど、国内外問わず様々なアーティストとのコラボレーション作品を収録。ライブでは様々な楽器の音をたった一人でその場で多重録音していく”音の実験室”ともいうべき空間を表現する。FUJI ROCK FESTIVAL、WORLD HAPPINESSなど、各種大型フェスなどにも出演。自身の活動以外では、映画「リトル・フォレスト」(監督:森淳一/主演:橋本愛)などの映画音楽をはじめ、NHK・Eテレなどのテレビ番組、舞台・ドラマ・CMでの音楽制作・楽曲提供や、国内外のアーティストのプロデュース、リミックスなど、活動の幅を広げている。2016年11月、sphontikと背景のための音楽研究室「BGM LAB.」を開室。
http://www.miyauchiyuri.com/
http://www.bgmlab.com/

コメント